2012/02/25

スペインで大人気の黒澤明監督作品

スペインに住みだしてから、スペイン人や他の外国の方によく言われること。


「アキラ・クロサワの映画が好きだ!」


でもお恥ずかしながら、邦画をあまり見ない私は黒澤明監督の作品を一度も見たことがありませんでした。

ここバルセロナにはこんな会社があります。

「IKIRU」

これは、スペイン人社長が黒澤明監督の作品「生きる」を見て感銘を受け、この会社名にしたそうです。
「生きる」はスペインでは「VIVIR」というタイトルで流通しています。
けれどあえて「IKIRU」としたところから社長がどれだけこの映画がお気に入りかということが窺えます。


気になっていながらもそこまで興味が持てなく見ていなかった作品ですが、最近近所の図書館のDVDコーナーをフラっと立ち寄ると「VIVIR」が目に飛び込んできました。
これはもう、見なさいと言われているかのように思え、このチャンスを生かしました。


これが近所の図書館。昨年5月にできたばかりの超人気者。3階から7階までびっしり本が置いてあります。マンガコーナーもあります!
いくらよくしゃべるスペイン人とはいえ、やはり図書館の中ではとても静かで勉強もかなり快適にできます。スタッフの方々もとてもいい人ばかり。


映画ですが、期待とか義務感はまったくなく無心で見始めましたが、最初のシーンから気持ちが入り込みました。
主演の志村喬さんの演技があまりにも素晴らしいからです。
彼のような目をしてる人、画面の中で見たことがありません。
こんな名俳優までも知らなかったなんて本当に恥ずかしいことだと思いました。

仕事に何のやりがいも見いだせず、ただ机に座り判子を押すだけの毎日を送っていた市役所の市民課長がある日、癌に侵されていると知り余命がいくばくもないことを知り、これまでの自分の人生の意味を見失った彼は市役所を無断欠勤し、これまで貯めた金をおろして夜の街をさまよう。
同じく市役所の仕事にやりがいを感じず辞めて転職していようとしていた女性部下と偶然街で会い、何度か食事を共にするうちに彼は若い彼女の奔放な生き方、その生命力に惹かれ・・・。

という話です。
このあと恋に落ち・・・なんていうのは現代の映画の考えられるストーリーで、黒澤監督は違います。
主人公が感じた若い女性の生命力を別の事に生かすのです。
今までの人生が何でもなかったかのように思えたからこそ、短い終わりの数ヶ月で生きている証を見出すかのように。

そして、主人公が亡くなってそれで終わりというわけではありません。
黒澤監督は彼の人生を傍から見る手段でこの後も話を続けます。


映画はもちろんオリジナルで、そして勉強のためにスペイン語のサブタイトル付きで見ましたが、とても日本らしい描写が多くサブタイトルでしか見られない黒澤ファンがかわいそうだと思えるぐらい、スペイン語では表せない言葉が多かったです。

今まで日本に住んでいながら黒澤監督の素晴らしさを知らなかったなんて。
日本にこんなに素晴らしい志村喬さんという名俳優がいたなんて。
外国人に何度薦められても見なかった自分が未熟だったな、と思いました。


図書館にありがたく返しに行ったら同監督、同者主演の「一番美しく」を発見。
このまま黒澤ファンになりそうです。


こちらに来てもうすぐで11ヶ月。
日本人として誇れるものが一つ増え、とても嬉しい出来事でした。